こんにちは。前回奈良女子大学の工学部のお話をしました。
その後女性の理工学系進学に関するニュースが話題になりました。今回は前回の続きで女性の学部選択での偏りについて調べました。
理工学系分野の中で女性の偏りがある?
前述のニュース対して「理工学系の中でも女性の偏りがさらにある。電気電子工学系や機械工学系が少ない」という意見が多くありました。確かに偏りあるよねーと指摘に納得したのですが、そこで急に自分が高校まではロボット作りたくて、ロボコン出たい機械工学系を志望していたことを思い出したんです。
「なんですっかり忘れていたのだろう。なんで進路変えたんだっけ?」と考えて
\(◎o◎)/!っと思い出したのがこのツイートです。
私高専進学親に止められ高校無線部機械工学志望だったけど、学祭見学時女子を外見で分類してたり、部活の工学部先輩達が私の胸の大きさをドイツ語で目の前で会話するのりが嫌で一緒の大学は除外した。
— てすてっど(testedquality) (@testedquality) 2022年4月17日
とりあえず理系に進んだ女子に機械と電気を選ばなかった理由調べたほうがいいですよ。 https://t.co/7om5h4dyzV
福岡で家から通える工学部はそんなになかったんですが、学校見学とかで嫌な思いしましてね・・・最後まで楽しかったと思えたのが進学先だけだったんです。ヤなことだったから記憶から抹消されてたのです。忘れられるヤなことで良かった・・・
セクハラ受けたツイートがいいねされた理由は?
しかし、この個人的な感想で書いたツイートが思った以上に皆さんにいいね!されました。もしや、同じような経験をした女性が多いってことだろうか?正直びっくりして改めて進路に偏りがある理由がわかるデータはないか調べることにしました。だってあくまでもツイートは私の個人的な気持ちなので、公平に調べるのです。それがシステムエンジニア。真実が知りたい。それに理系に近い授業を行う水産高校に進む女性が増えるためにも、この辺りは大事なことだと思えました。
とはいえ、そんな調査とか研究あるのかしら?とググってみたのですが、理系進学の推進についての団体や施策あるものの、学科の違いを調べたものとして見つかったのは内閣府日本学術学会のこちらのみ。理工学分野の会員さん、つまり専門家についての女性活躍促進の状況について調査した文書。
報告:理工学分野におけるジェンダーバランスの現状と課題 (scj.go.jp)
多くの方が理工学分野における女性の扱いに興味を持たれているようなので2020年調査「理工学分野におけるジェンダーバランスの現状と課題」を紹介。現状確かに電子機械工学女性が増えてないことが記述されています。https://t.co/aJ0x2pxoor
— てすてっど(testedquality) (@testedquality) 2022年4月18日
この中で電気電子工学は女性の割合が3%と書かれていて、他の学科の割合から見ると確かに少ないことはわかりました。ただ、なぜかについてまでは調査されていませんでした。 女性は電気が怖いと思う人が多いからという一文を見たときには「それ言い出したらいろんな分野難しいんでは?」と・・・
専門家の観点
しかし検索だけではそこで詰まってしまったので、今回は禁じ手の専門家の力をお借りしてみました。実は現在勤め先に官公庁向けのシンクタンク部門があり、調査の専門家が数多くおられるのです。そこで今回のお話をして(個人的な興味であるから無理はしないでとご説明して)理工学部でも電子電機系や機械系に女性が進まない理由や調査をしている論文などがないかを聞いてみました。
すると、元電機系の工場勤めをされていた方からある推測と、関連した論文を教えていただきました。
https://www.chusanren.or.jp/consultation/pdf/2019jin1.pdf
理系分野で電子電気工学や機械工学に進む女性が少ない理由について、就職先の工場で体力的に負荷がかかることで敬遠されていることが原因の一つかも。中部産業連盟が出している論文「製造業における女性活躍の推進に関する課題と対策」がわかりやすかった。https://t.co/hmVACqscUY
— てすてっど(testedquality) (@testedquality) 2022年4月22日
専門家の方曰く「僕は男性ですが、電機系だと働く場所が工場になることが多いです。そして工場って結構肉体労働が多いんです。そんな職場が多いと知ってると進路として選びづらいのではないでしょうか?」というご指摘。そして紹介頂いた論文は中部地方の製造業において業務改善コンサルタントを行っている社団法人が公開しています。 そこでは「女性活躍推進がうまくいかなかった理由とその改善策」について事例を挙げて書かれています。今回の電気電子工学系や機械工学系の職場は論文内3タイプの中での「B」が多いですね。
タイプ B(製造現場は男性中心職場で、女性労働者比率が低い)
特徴は
タイプ B の製造現場は、重筋作業や専門的知識・技能が必要とされる作業が多い男性中心職場で、今まで女性の配属は限定的で難しかった。まず女性の職域を拡大し配属可能とすること、そして定着できることが課題となる。
こちらでも体力について言及ありますね。改善対策として以下2点が挙げられてます。
- 男性職場への女性の採用・配置の試み
- 重筋作業や体力的に負荷のかかる工程の改善
女性の理系進路選択を阻むVicious Cycle
最初にご紹介した日本学術学会の「理工学分野におけるジェンダーバランスの現状と課題」内7ページ図A 女性の理系進路選択を阻む悪循環の図を引用いたします。
女性には現状進路選択で理系選択を阻む原因が随所に出てくるのですが(この図みたらけであるあるすぎる)特に電気電子工学系、機械工学系は阻む原因となる箇所が他の理工系分野に比べて多いということだと思われます。
特に「理学工学分野に進学」での阻害要因3点が前述のタイプBでの対策と重複しているのです。
- 工学部には女性少ないよ
- 女性は活躍しにくいよ
- 危ないところにはいかない方がいい
男性が多いと男性優位の社会が形成されやすい
そしてもう一つ大事な視点、男性中心となった組織では男性が優位になるんです。男性はその気がなくてもその視点を忘れてはいけないです。
https://todai-umeet.com/article/60009
あと東大理系学部の女性たちのインタビュー。これ公式と思えないくらい正直に書かれてると思います。https://t.co/jahZGfBGS0
— てすてっど(testedquality) (@testedquality) 2022年4月22日
男子の方が人数が多いので、基本的に優位なんですよね。
普通に下ネタとかも言うので、不快な思いはしてましたね。女子がいる前で裸になる人がいたりだとか。
これは厳しい。このインタビューを大学自体が公開しているのは男性たちへの警告ですよね。こういう組織の意識がある状態で女性が来てもなかなか組織に根付きません。
結論 「みんなで幸せになろうよ」
この調査を調べているうちに「男性中心と言っても男性だって年をとれば体力なくなるよねえ」とか「けがした人は工場で働けないのかな」とか色んな視点を持てました。そして「女性が働きやすい会社や学校は男性も楽なのでは?」というか「どんな人でも働きやすい、勉強しやすい組織であるべきでは?」という気持ちが強くなりました。
結局組織の人が全員同じように力が発揮できるような仕組みを作ることがマネジメントであり、女性率の偏りはその表れの一部であるということです。しかし、一方で看護学科などのように逆のパターンもあるわけで、女性だけを優遇してほしいわけではないことも男性にはわかっていただきたい。タダでさえ若年人口が減っている日本で優秀な人材が活躍できるような仕組み作りは急務なはず。
ということで「みんなで幸せになろうよ」と心から思った次第であります。